サガリバナは、奄美大島以南の琉球列島に分布しており、河口のマングローブ後背地に自生する小高木です。 毎年6月下旬から7,8月の間、夜に芳香を放ちながら白やピンクの花を咲かせ、その朝に雄しべ(花びら)を散らします。
暗闇で芳香とともに咲き、そして散った花びらが水面に浮かび、辺り一面を白やピンクで敷き詰めたような光景は、実に幻想的です。
今では、沖縄の夏の風物詩として広く知られ、『夏の夜の花見』として定着しつつあります。 また、那覇の首里では同種を「キーフジ」と呼び、古くは琉球王朝によって庭園樹に用いられました。
現在でも庭木や観葉植物として根強い人気があり、水辺植生の再生、公園や街路の緑化樹種として、重宝されています。
沖縄の島々においては、埋立や道路、橋、護岸などの建設によって水辺の形が改変され、流域から土砂が河口へ流入堆積し、 そして私達の生活排水や畜舎の排水などによって水が汚された所がたくさんあります。
そのことによってサガリバナをはじめ水辺の貴重な自然が消えてしまったところが少なくありません。
OECでは、水辺の環境回復活動「サガリバナあしながプロジェクト」や「サガリバナ観賞会」を通して、私たちの身近な自然を見つめ直す機会を提供しています。
沖縄本島には同種について多数の名所やイベントがあります。 名護市真喜屋の『舞香花(もうかばな)祭り』や西原町内間御殿の『サワフジ祭り』、NPOが主催する那覇市国場の『国場バリントニア観賞会』などがあげられます。
今回は、沖縄本島のサガリバナの分布(生育)地点のリストアップです。これまでに、入手した情報から確認できた那覇以外の33、市内の29、合計62の生育地点です。
※バリントニア(サガリバナ)について、情報をOECまでお寄せください。
※下記の生育地点は2002年時点に確認できたものです。
< 北 部 > 1.国頭村辺野喜川河岸並木(川沿い道路) 2.国頭村安波(天然記念物サキシマスオウノキ) 3.大宜味村塩屋湾北岸(田港集落) 4.東村川田(天然記念物サキシマスオウノキ) 5.海洋博記念公園(都市緑化植物園) 6.本部町伊豆味小周辺 7.名護市真喜屋 8.名護市幸地川河岸 9.恩納村伊武部ビーチ周辺 10.恩納村名嘉真川下流(墓地) 11.恩納村『垂川沿い』 12.宜野座村漢那 < 中 部 > 13.石川市『山城サワフジ通り』 14.天願川上流河岸と民家(山城ダム下) 15.嘉手納町比謝川下流(嘉手納高校裏) 16.沖縄市第二池原(クシバル) 17.沖縄市倉敷ダム東 18.沖縄市東南植物楽園北側 19.沖縄市美里3丁目25の水路 20.沖縄市美里JA給油所〜青年会館の家々 21.沖縄市『県運動公園』 22.宜野湾市大山『せせらぎ通り』 23.浦添市前田116-2 24.西原町工業用地への道路 25.西原町内間御殿とその周辺 26.西原町琉球大学構内 < 南 部 > 27.与那原町与那原262 28.与那原町与那原3689(マルエー裏) 29.南城市佐敷新開地道路並木 30.南城市佐敷佐敷中331号入口及び佐敷小校庭 31.佐敷小前レストランとシュガーホール駐車場 32.南風原町字大名120 33.南城市大里古堅391-1(給油所向かい) |
※(上)名護市真喜屋 花びらのじゅうたん ※(上)西原町内間御殿のサガリバナ |
1.おもろまち天久北公園 2.牧志2-2-30(デパート三越裏) 3.牧志1-6-71(安木屋裏) 4.松山のマンション前(旧日銀那覇支店裏) 5.コミュニティ通り並木(市役所と県庁の間) 6.県庁構内(県庁舎と県警庁舎の間) 7.那覇高校正門前 8.西1-11 9.小禄金城公園(那覇西高校正門前) 10.大道練兵橋 11.三原1-31-20 プリランテ三原 12.首里末吉公園の並木 13.首里金城町1-42-6(首里城南となり) 14.首里金城町4-17(崎山ハイツ入り口) 15.首里崎山1丁目道路並木 16.首里崎山1-35 瑞泉酒造 17.首里赤田町道路並木 18.首里当蔵3-30(首里公民館南となり) 19.首里山川町1-107(グランドキャッスル横) 20.首里鳥堀町4-79-4(弁ヶ岳近く) 21.首里鳥堀町4-101-2(弁ヶ岳近く) 22.金城ダム 23.識名園 24.長田1-19-10 大次マンション(寄宮中裏) 25.長田2-7-40(上間小正門近く) 26.漫湖河岸の並木・漫湖公園内 27.国場22,27,125番地(十字路付近の民家) 28.国場川中流河岸の並木(仲井真小裏) 29.国場沖縄尚学高校裏の墓 |
※(上)識名園 代表的な琉球庭園 |
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沖縄で見られる植物の多くは花・実をつける期間が長く、成熟した実のそばでつぼみや満開の花を見ることがよくあります。 この現象は、南の島の植物が台風など、自然の災害を乗り越え生きのびる戦略に思えるとOECニュースNo.2で紹介しました。沖縄の水辺に自生するサガリバナやモモタマナなどはその典型で、ここでは当クラブが過去に栽培した水辺の植物について紹介します。
ナハキハギ学名 | Dendrolobium umbeillatum (Linn.) Bentham | |
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マメ科で3〜6mの低木か小高木。 沖縄本島の国場川河口域と今帰仁村諸志に残る。 沖縄県レッドデータ:危急種。用途は飼料や緑肥。 |
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学名 | Eichornia crassipes Solms-Laub. | |
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ブラジル原産の浮き草。春から夏に花を咲かせる。用途は飼料。 |
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学名 | Bruguera gymnothiza Lamk. | |
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奄美大島を北限とするマングローブ。 アカバナヒルギと呼び、来年の5月成熟した胎生(たいせい)種子になる。 用途は木材や薪炭材、染料。 |
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学名 | Hoya carnosa R. Br. | |
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カミサシバナ(首里)。石灰岩地帯に多く、ほふく性多年生草本。 名前の由来は葉がランの葉に似ているから。 自生種の鉢植えを研究中。 |
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学名 | Barringtonia racemosa Spreng. | |
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写真は4年目の鉢植え実生苗。 実生からの鉢植えで花・実をつけたのはOECが初めて。 |
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学名 | Terminalia catappa L. | |
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コバテイシ、クワァディーシ(沖縄)などと呼ばれ、沖縄島以南に分布。 大高木で落葉広葉樹で日陰木、街路樹。花は白く目立たない。 果実はコウモリの好物。 |
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漫湖はこの頃みんなが口をそろえて「ドロの臭いがしない」「魚の大量死が起きない」などといわれるようになった。 これは国場川と饒波(のは)川の水質が改善されたことの証であり、水辺の自然と環境の保全に関わってきた者の一人としてうれしく思う。
また、そのことは、ラムサール条約への登録とともに沖縄にとっても大きな喜びであり、世界に誇れることの一つになると思う。 漫湖は、沖縄の川の自然と環境を考える上で最も象徴的な場である。 同条約への登録時、漫湖をとりまく環境や水鳥などの生き物について県民の間に関心が高まっていたが、今は薄れてしまった。 そこで、もう一度関心を持っていただくため、このページでは、漫湖のもつ価値や位置づけ、 現状、そしてこれからの漫湖の保全・管理・活用に向けた課題点などについて、改めて3回にわたって考えてみたい。 沖縄の水辺の環境問題には、埋立・護岸・ゴミなどによる形の改変、土砂(赤土・クチャ)流出や有機物・有害物質などによる水質汚濁がある。 漫湖はそれらのいずれをも有し、一部自然の岸を残した半自然の河口湿地といえる。 漫湖は、1999年5月中米コスタリカで開かれた第7回ラムサール条約締約国会議で同条約への登録認定証が交付された。 漫湖が同条約に登録されたのは、国内法による鳥獣保護区特別保護地区に指定され、さらに登録への地元県市町村の合意などが前提になった。 環境省(環境庁)によると漫湖は、 1) 約70種以上の野鳥が観察され、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地(世界的な絶滅危惧種クロツラヘラサギ、 ダイシャクシギやハマシギなど5基準種の飛来、国内的にもシギ・チドリ類の重要渡来湿地)である 2) 日本国内では唯一マングローブが広がる湿地である 3) 40万県民に囲まれた都市部にある、などがその価値といわれている。 さらに私はこれら以上に 4) 沖縄の水辺の自然と環境を学ぶ、環境教育に最適な場所であることを挙げたいと思う。 一方で漫湖をとりまく環境や自然について、水鳥など野鳥の渡来数の減少や流域からの土砂の流入堆積とゴミの漂着、 マングローブ域の拡大などの問題・課題があるのも事実である。 今、漫湖はラムサール条約登録湿地として、水鳥を頂点とするマングローブのある沖縄の河口湿地生態系として保全・管理・活用が求められている。 |
(上)豊見城城址公園から見た漫湖(1977年) (上)豊見城城址公園から見た漫湖(2001年) (上)漫湖のクロツラヘラサギ (上)漫湖のダイサギ |
沖縄の水辺環境には形の改変と水質汚濁など、形と水質の問題・課題があり、漫湖はそれらのいずれも有することを(1)で紹介した。
現在の漫湖の面積は、1945年に米軍が撮影した航空写真の約半分の58haに減少している。 今後、これ以上の面積減少と、饒波(のは)川下流左岸でわずかに残るヨシ原の自然湖岸の改変がないことを希望する。 漫湖における土砂の流入堆積の問題は、国場川・饒波川両流域における宅地造成や畑の耕作、河川工事などが流出要因と考えられ、 同湖がいわば河口の大きな沈砂池(ちんさち)の役目を果しているといえる。両流域における流出源の特定とそれらの流出量の推定が急がれる。 ここ25年間に土砂やゴミが流入し、堆積したことによって湖底が全体的に浅くなった。 そのためマングローブの生育に適したレベルに達し、特にメヒルギは、この10年の内にそのほとんどが自生の形で急激に広がった。 漫湖における有機物の汚濁は、真玉橋(国場川水質測定基準点)のBOD値でみると、昭和61年に汚れが最も著しく、当時全国のワースト5にランク入りしていた。 しかし、それから8年後の平成6年度、同地点で水質の環境基準を達成した。 汚れが著しい当時、流域の豚舎排水と生活排水の多くが漫湖に流れ込んだため、過剰と思われる有機物が供給されていた。そのとき漫湖は図らずも「浄化槽(じょうかそう)」の役目も果していたといえる。 漫湖に流れ込む有機物(汚濁)量は、国場川から2.8ton/日(平成4年度)、饒波川から1.4ton/日(平成6年度)、合計4.2ton/日と推算されている。 |
(上)生活排水やゴミで汚された川 (上)豚舎 |
(上)真玉橋のBOD値 |
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漫湖の湖面に生育しているマングローブは、そのほとんどがメヒルギで他にヤエヤマヒルギとオヒルギがみられる。 漫湖北岸や自然の岸では、シマシラキやクロヨナ、オオハマボウなども見られる。漫湖におけるヒルギ類の面積は、
とよみ大橋に囲まれたの饒波川左岸部分で9ha、湖岸沿いが2ha、合計で約11haに達している。 |
西表島や沖縄本島の億首川、大浦川のマングローブ前縁部では、生態的(物理・化学・生物)要因により、その広がりが自然に制限されている。
しかし漫湖ではその制限力が弱い。流域からの土砂・ゴミの流入が続くのであれば、対症療法としてその分布(広がり)を人工的に制限・管理することが必要になると考える。
そのための定期的なマングローブの間引きや河床と湖底の浚渫が考えられる。 漫湖のマングローブ管理には、 1) マングローブや汚濁物質の栄養(有機物)供給源としての役割 2) 開放的な湿地(干潟)の確保 3) 河積阻害(流れの妨げ)の回避 4) シェルターとしての役目、などの面からの判断が必要と考えられる。そして、そのための定量的な基礎データが必須になると思われる。 ところで漫湖の水質が良くなった一方で、ペットボトルや発泡スチロールなど分解しにくいゴミの汚れが目立つ様になった。 今、漫湖はさながら生活ゴミの展示場だ。国場川と饒波(のは)川の流域に住む人、生業を営む人、そして利用(通行)する人まで含め、 流域で行われる様々な人間の活動・行動の結果が河口の漫湖に現れる。そのことから河口は、川とその流域を写す『かがみ』といわれる。 漫湖の漂着ゴミは、そのことを端的に示している。従って、漂着ゴミは環境の指標であり、最適な教材といえる。 漫湖の漂着ゴミについては、特に上流の与那原や大里、東風平、南風原の方々に参加を呼びかけ、その数と種類の調査や清掃など、様々な活動が必要であり、 それを継続していくことが最も有効な環境教育であり、また保全対策になると考える。 最近、漫湖に渡来する鳥の数が減ってきていると、沖縄野鳥の会は言っている。 考えられる要因として 1) 橋や道路、ビルなど構築物の増加 2) 交通騒音やライトアップなど環境の変化 3) 漫湖と干潟の面積減少 4) 流入有機物量と底生(餌)生物の変化 5) 世界的な水鳥の減少 6) 鳥の渡りのコースの変化 7) 国内・県内での飛来地の変化 などが考えられ、専門家による原因解明が急がれる。 ラムサール条約登録を契機に漫湖をとりまく環境や水鳥・マングローブなどの生き物について県民の間に関心が高まった。 今、改めて漫湖のもつ価値や位置づけを確認し、理解を深め、これからの漫湖の保全・管理や活用をどうすればよいかを討論する場が求められている。 |
(上)饒波(のは)川河口のメヒルギの広がり (上)国場川河口右岸(漫湖北岸)の漂着ゴミ (上)漫湖南岸でMyキーフジを植える親子 (上)国場川河口左岸(漫湖南岸)の清掃 |